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「料理の取り分け」

〜「さゆさん」から投稿されたフアン〜

『上司と同席の会食で料理を取り分けるとき失敗しないかフアン…』

早いものでもう10月!いよいよ食欲の秋の始まりです。特に、これから年末にかけてはハロウィンやクリスマス、懇親会や忘年会など食事をする機会が増えますよね。そんな大人数での食事のシーンによく出てくるのが、大皿料理や鍋料理など「取り分け」が必要な料理。上司など目上の方と一緒の席では、誰が取り分けるべきなのかわからなかったり「きれいに取り分けられなかったらどうしよう?」と不安になったりして、取り分けるか躊躇することもありますよね。
そこで「料理を取り分ける方法」についてオリックス生命全社員に聞いてみました。

〈上司〉もしくは〈会食(その日)の主役〉の方から取り分けると回答した人が9割で、取り分け方は「均等に」が7割という結果でした。


気をつかいながらの食事は面倒で、楽しめないと思いがちですが、昔から「同じ釜の飯を食う」ということわざもあるように、シェアしながらの食事はその後の人間関係をより円滑にする役割もあります。 それぞれができる範囲でお互い気づかいながら楽しみたいですね。

BAKUBAKU

料理を取り分けるのボクも苦手だな~。
上手に取り分けができるように、料理家で料理のトリワケマスターとしても活躍する福本陽子さんに、取り分けのマナーとコツについて聞いてきたよ!

取り分けにルールはない。

Q:誰が取り分ければいいの?

 取り分けには「誰がすべき」というルールはありません。というのも、目上の人が同席していたとしても、大皿料理を食べるのはフォーマルな食事会ではなく、ある程度親しい関係の人が集まって食事をするシーンですよね。同じお皿から料理を取り分けて、みんなでワイワイ楽しむのが大皿料理や鍋料理の醍醐味。ルールに縛られず、気が付いた人やたまたま取り分けやすい場所に座った人が、率先して取り分け役をかって出てください。もし、目上の方が取り分けてくれようとしたら、無理に止めずに「お願いします!」と好意に甘えてしまいましょう。もちろん、取り分けてくれた人が目上であるなしに関わらず「ありがとうございます」の一言は忘れずに。
 とはいえ、取り分けた料理をおすすめする順番は、やはり目上の人を優先したほうがスマート。目上の方への配膳がまだなのに、先に食べ始めてしまうのは避けたいですね。できれば、みんなに料理が取り分けられてから食べ始めるとよいでしょう。

絶好のコミュニケーションのチャンス

Q:上手に取り分けられるか不安。

 たしかに取り分けには、ある程度の慣れが必要です。不安な方は、自宅での食事にも大皿料理を取り入れて、練習をしておくといいですね。ただし、何をもって「上手」なのかは、人によって判断の分かれるところ。とにかく均等に分けるのを良しとする方もいれば、見た目重視、好き嫌い重視の方もいるからです。実際、「取り分けるときに“一番意識するところ”は?」の問いに対するオリックス生命の社員の皆さんの回答を見てみても、「均等に分ける」が最も多いものの3割の方は「見た目重視」「苦手なものは外す」「大食と小食で分ける」と、必ずしも「均等に分ける」ことだけが重視されているわけではないことがわかります。
 そこで、私が提案したいのは、取り分けを「コミュニケーション」の1つと考えること。取り分け役になったら、「皆さん、嫌いなものやアレルギーはないですか?」「量はどのくらいにしますか?」と周囲の人に声掛けをしてみてください。一人ひとりに好きなものを適量取り分けてあげることができますし、何より、その声掛けがきっかけで会話がはずみ、場の雰囲気が盛り上がる効果も期待できます。取り分けを「役目」ではなく、周囲の皆さんとのコミュニケーションの手段の1つだと思えば、緊張せずにできるようになります。
逆に料理を取り分けてもらう側の立場になったときは、食べ残しの無駄を減らすためにも、率直に自分の好き嫌いと食べられる量を伝えるのがマナー。そして、取り分けてくれた方への感謝の言葉を添えると素敵ですよ。

使いやすい道具があると便利!

Q:取り分けるときのコツは?

写真提供:株式会社オークス http://www.aux-ltd.co.jp/

 コツは大きく分けて2つあります。まず、取り分けやすい道具を使うこと。料理によって取り分けやすい道具は異なりますが、私は汁物以外の取り分けには「ゆびさきトング」や「もりつけトング」という便利なトングを愛用しています。自宅でのおもてなしにはもちろん、外食時にも使えるように、マイ箸ならぬ「マイトング」として、これを持参しているほどのお気に入りです(笑)。
 ただ、一般的には、外食時はお店で用意された道具で取り分けるしかありませんよね。もし、その道具がとても使いにくい場合は、お店の人に遠慮なく「ほかにトングかお箸はありませんか?」とお願いしましょう。
 2つめのコツは、大皿やお鍋に盛られた料理の構図を、取り分け皿(器)の上に再現すること。たとえば大皿の上にチキンと野菜5種類が盛り付けられていたら、好き嫌いやアレルギーで食べられないものがある人を除き、全員のお皿にチキンと野菜5種類を大皿と同じように盛り付けること。こうすれば、あれこれ考えずに美しく取り分けることができます。
ただし、見た目や自分の流儀にこだわって、盛り付けに時間がかかり過ぎるのは考えもの。大皿料理はみんなでワイワイ楽しむのが一番!見た目にこだわり過ぎず、ざっくばらんに楽しんでください。

写真提供:株式会社オークス http://www.aux-ltd.co.jp/

福本先生、ありがとう〜。
上手にしようと思わないで、慣れとコミュニケーションが大事なんだね!
それでもフアンなら、お店を選ぶときにお料理のことも事前に確認しておくとアンシンだね。

*トリワケマスターとは、オークス(株)主催のトリワケンテイ http://toriwakentei.com/ にて、「トリワケ術を伝えている者の称号」のこと。


福本陽子先生 プロフィール

〈Men’s Kitchen Style〉代表
男子限定料理教室【メンズキッチン】主宰 http://mens-kstyle.com
男子料理研究家・メンズキッチンスタイリスト
食育指導士/食生活アドバイザー/フードコーディネーター