オリックス生命

子どもから学ぶ「モンテッソーリ教育」

「モンテッソーリ教育で、子育ての予習」

第5回

「出産準備編」生まれる前から夫婦で
知っておきたいこと

モンテッソーリ教育のお話をしていて、一番多い皆さまからの感想は、「もっと早く出会っていれば」というひと言です。

では、モンテッソーリ教育とのベストな出会いは、いつなのでしょう?それは、赤ちゃんを授かった時、 「出産前」なのです。さあ、赤ちゃんが生まれてくるまでに、ご夫婦で子育ての準備をしておきましょう。

出産準備のキーワードは「秩序」

赤ちゃんはこの世に、なにも知らずに生まれてきます。そのため、生まれた瞬間から、世の中の様子をどんどん吸収し、ルール付けをして自分のものにしていこうとします。この時のルール付けを「秩序」と言います。 その力はすさまじく、写真を撮るかのように、瞬間的に吸収していきます。

例えば・・・
●お母さんの匂いはこう。
●眠る布団の感触はこんな感じ。
●この場所には絵が掛かっている。
●お風呂で体を洗ってくれる順番はこう。

・・・というように、赤ちゃんの中でどんどん秩序ができてきます。秩序ができあがることで、心地良さや安心を感じるようになります。

逆に、「秩序が乱れる」ことが赤ちゃんは大嫌いです。
いつもと違う匂い、いつもと違う場所、いつもと違う順番・・・。
お風呂の洗い方がいつもと違うだけで、たちまち不機嫌になってしまう…などということもあります。これを「秩序の敏感期」と言い、生後間もなくから、4歳くらいまで色濃く現れます。

「赤ちゃんはいつもと同じが大好き」なのです。では、赤ちゃんの秩序を守るために、親はどのような準備が必要なのでしょうか?

赤ちゃんのための
4つのコーナー

わが家の室内環境をチェックしながら、以下の4つのコーナーを決めておくことをお勧めしています。

①授乳コーナー

赤ちゃんとお母さんの大切なコミュニケーションの場です。できる限り同じ場所でゆっくりと授乳をすることで、赤ちゃんは「お腹がへると、いつもこの場所でママがオッパイをくれるんだな」という秩序ができて、とても安心します。写真のような専用の椅子に、ゆったり座って授乳できると、ママのリラックス感が赤ちゃんにも伝わります。授乳を中断しないように、ハンカチ、テッシュペーパー、お母さんの飲み物なども手の届く所に置いておきましょう。授乳をする時は、赤ちゃんの顔を見ながら行います。スマートフォンを見ながらは厳禁ですよ。

②おむつ替えコーナー

「おむつが濡れて気持ち悪くなると、いつもこの場所で、同じ手順でおむつを替えてくれるんだな」という秩序ができて、赤ちゃんの心が安定します。立てるようになるまでは、写真のようなおむつ台があったほうが、ママの腰の負担が軽くなります。毎日、何回も繰り返されるおむつ替えが、親子両方にとって、「明るく、楽で、楽しい」コミュニケーションの時間になるように工夫してみましょう。また、外出する際は、「おむつ替えシート」を携帯しましょう。場所は違っても、いつもと同じシートの上でおむつ替えすることは、赤ちゃんの安心につながります。

③運動コーナー

生まれたばかりの赤ちゃんは動けませんが、「目の焦点を合わせる」などの運動を始めます。真っ白な天井だけでは、焦点が合わせられませんので、「モビール」などを吊ることをお勧めします。また、鏡を横に置いておくことも、赤ちゃんに良い刺激となります。(鏡が倒れると危ないので、顔の近くには置かないでください)
ハイハイをして、つかまり立ちをするようになったら、低い棚を設置してあげると、とても役に立ちます。子どもの発達を予習しておいて、次のステップに必要な環境を整えておくことが秘訣です。

④睡眠コーナー

赤ちゃんは一日の多くを寝てすごします。睡眠のコーナーは家の中で一番静かな場所を選んであげましょう。ベビーベッドにすると、床からのホコリが少なく、安全です。しかし、檻の中に入れられているようで自由がないというデメリットがあります。床に直接、ふとんを敷くと、自分の意志で出入りできる自由が得られる反面、ペットやきょうだいからの干渉があるというデメリットがあります。家の間取りや考え方によって決めましょう。

きちんとコーナーを分けることが難しい場合は、できるだけ、「いつもと同じ」を心掛けるだけで、赤ちゃんの心は安定します。ぜひ、ご夫婦で話し合ってみてください。

〈その他の室内環境の準備〉
  • 床に顔を付けて、赤ちゃん目線で室内をチェック。
    ※誤飲するような物は落ちていないか・・・など
  • 充電のコードなどは手の届かないところにしまう。
  • 棚などの耐震補強も万全に。
  • エアコンフィルターの掃除、じゅうたんやベッドなどのダニ退治。
  • 非常時の持ち出し袋には、オムツ、水、ミルクなど、赤ちゃんに必要な備品も忘れずに。
  • ペットとのコンタクトはアレルギーの有無がはっきりするまでは避ける。
  • お兄ちゃん、お姉ちゃんの居場所もしっかり確保しておく。

母子共生期(ぼしきょうせいき)の家族の協力

出産から8週間程度の期間は、赤ちゃんとお母さんにとって特別な意味がある「母子共生期」といわれます。母と子がまるで一人の人間になったような、特別な関係が生まれます。そのため、お父さんや祖父母など身近な家族の大切な役割は、この「母子共生期」を守ってあげることなのです。親戚や友人など多くの方がお祝いに訪れたりします。出産を終えたばかりの母子はとても疲れています。事情を話して早めにお引き取りいただくなどの役割は周りの人が引き受けてあげましょう。

父親の育休の大切さ

自分のお腹を痛めていない夫にとって「父親の自覚」が芽生えるのもこの時期です。自分が守ってあげなければ生きていけない、か弱い命を自分の腕で抱くことで、わが子との深い絆が生まれるのです。そうした意味からも、父親の育休は、妻のためだけでなく、自分のための大切な時間になるのです

今回のポイント

①出産準備のキーワードは「秩序」
赤ちゃんは、いつもと同じが大好き!

②「母子共生期間」は家族で協力を
父親の育休は自分のための大切な時間

藤崎達宏 プロフィール

日本モンテッソーリ教育研究所認定教師(0~3歳)
国際モンテッソーリ教育協会認定教師 (3~6歳)

外資系金融機関に20年勤務したのちに独立。自らの4人の子育て経験とモンテッソーリ教育を融合した子育て講演会を全国で展開している。 幼稚園、保育園から全国の医師会まで、週末のほとんどが、講演と個別の子育て相談でうまる人気講師。

著書「モンテッソーリ教育で子どもの本当の力を引き出す」は、モンテッソーリ教育の入門書としてベストセラーとなり、台湾での翻訳出版が決定している。

最新作「0~3歳限定の実践版!モンテッソーリ教育で才能をぐんぐん伸ばす」も、豊富な写真とイラストを取り入れた、子育てガイドブックとしてAmazon幼児教育ランキングで1位を記録している。

You Tubeチャンネル「モンテッソーリ教育TV」公開中!
すきま時間でモンテッソーリ教育の本質を効率的に学ぶことができます。コラムの予習・復習にもご活用ください。

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