オリックス生命

子どもから学ぶ「モンテッソーリ教育」

「モンテッソーリ教育で、子育ての予習」

第8回

子どもの成長の
サイクル

藤井聡太棋士のご家族が心がけていた、
ただ一つの事とは?

子育てをする上で一番大切なことは何でしょう?
それは、「わが子が、一人で生きてゆけるようにお手伝いすること」ではないでしょうか。そして、その支えになるのが「自己肯定感」なのです。

「自己肯定感」とは

自己肯定感というのは、「自分はどんな状況になっても、そこそこやっていけるんじゃないかな」といった、子どもの心の底に宿る楽観的な自信です。つまり自分の存在を認め、自分を好きになっている状態です。 「人と比較して、自分は優れている」というような、優越感とは異なります。
自己肯定感の重要性については、モンテッソーリ教育だけでなく、さまざまなジャンルで提言されています。たとえばアドラー心理学(個人心理学)でも「自己肯定感の高まるほめ方」などが知られています。 どちらも、子どもの成長の真理という意味では、同じことを言っています。

この「自己肯定感」は、「いつ、どこで、どのように生まれるのでしょうか」

「自己肯定感」が生まれる
子どもの成長のサイクル

下図はモンテッソーリが考えた「子どもの成長のサイクル」です

❶興味・関心

子どもは初めての場所に来ると、最初は警戒して、親の陰に隠れています。安全だとわかると、興味・関心をもって近くをウロウロ散策し始めます。

❷自己選択

自分が成長のためにやらなくてはならない活動を自分で選びます。これが「自己選択」という最も大切なステップです。

❸繰り返し・集中現象

自分の成長に合った活動を、「自己選択」することで、集中し、繰り返します。

❹満足感・達成感

自分で選んだことを繰り返すことで、心が満たされ、満足感と達成感を獲得します。

❺さまざまな能力を習得

最初はできなかった活動が、何回も繰り返すことで、だんだん上手になってきます。

❻自己選択力・自己肯定感が生まれる

①〜⑤のサイクルを経て、「自分は一人で生きていけそうだ」という自己肯定感が生まれます。


自己肯定感の土台は0~10歳くらいまでにでき上がります。
成長のきっかけとなる行動は、〈一人で階段を上がれた〉〈一人でティッシュペーパーを引き出せた〉〈一人でハサミを使って紙が切れた〉など大人から見るととるに足らないものかもしれません。
しかし、大切なことは、「自分で選んで、自分でできた」ということです。その体験があるからこそ、「よし、次の活動を選択しよう」と、成長のサイクルが回り始めるのです。

世にいう「成功者」に共通することは、この成長のサイクルを大人になってからも、自分の中に持っていることです。
たとえば、野球のイチロー選手は、「人との比較ではなくて、自分の中でちょっとだけ頑張った。そのことを続けていく」という言葉通り、何歳になっても、自分の成長に合った行動を繰り返すことで、次々と偉業を成し遂げてきました。


藤井聡太棋士の成長の秘密

公式戦29連勝の新記録を樹立した藤井聡太棋士が、幼少時代に受けていた教育法としてモンテッソーリ教育が一躍注目を浴びました。確かにモンテッソーリ園での活動が、彼の成功の一端を担っていることは間違いないでしょう。しかし、本当の秘密は彼を見守るご家族のスタンスにありました。母の祐子さんが新聞の取材でこう答えています。

「好きなことを見つけて、集中してもらうために何ができるか、いつも考えていた」。父の正史さんも「いつの間にか『なにもかも好きにやらせよう』という雰囲気になっていました」と言っています。つまり、彼の成長のサイクルがしっかりと回り続けるように「邪魔をしなかった」ということなのです。子どもの成長に対する正しい認識と、正しいサイクルがしっかり回るように見守るという、愛情と実行力がご家族にあったということが、最大の秘密なのです。


間違った
子どもの成長のサイクル

成長のサイクルの重要性はわかっていただけたと思います。
このサイクルさえ回っていれば、子どもは一人で成長していくのです。しかし、このサイクルの回転が停止してしまっているご家庭が多いので注意してください。
たとえば、下図のようなことになっていませんか?

❶興味や関心を持てるものが周りにない

部屋があまりにきれいに片づけられてしまっている。もしくは、雑然としていて、何を選択していいのかわからない。

❷自分で選択できない

自分で選ぼうとすると、先回りして活動を指示されてしまう。「危ないから・遅いから・汚いから」と、代わりにやってしまう。(これを代行と言います)

❸集中を邪魔される・繰り返せない

自分で選択していない活動なので集中しない。集中していても中断される、違うものを与えられる。

❹満足感・達成感を得られない

結果はできたとしても、自分の意志で活動していないので満足感が得られない。

❺必要な能力が得られない

繰り返さないので、上手にならない。

❻自己肯定感が育たない

「自分では選べないんだ。親の力を借りなければできないんだ。だから、親の指示を待っていよう」となってしまう。


いかがですか?完全にサイクルは停止してしまいましたね。原因は、親が「よかれと思ってやっている」ことなのです。

子育てで大切なことは「わが子が、一人で生きてゆけるようにお手伝いすること」でしたね。
成長のサイクルというらせん階段を、子どもが自分の力で駆け上がっていくことが一番大切なことなのです。
親の役割は、環境を整え、邪魔をせず見守ることなのです。

藤崎達宏 プロフィール

日本モンテッソーリ教育研究所認定教師(0~3歳)
国際モンテッソーリ教育協会認定教師 (3~6歳)

外資系金融機関に20年勤務したのちに独立。自らの4人の子育て経験とモンテッソーリ教育を融合した子育て講演会を全国で展開している。 幼稚園、保育園から全国の医師会まで、週末のほとんどが、講演と個別の子育て相談でうまる人気講師。

著書「モンテッソーリ教育で子どもの本当の力を引き出す」は、モンテッソーリ教育の入門書としてベストセラーとなり、台湾での翻訳出版が決定している。

最新作「0~3歳限定の実践版!モンテッソーリ教育で才能をぐんぐん伸ばす」も、豊富な写真とイラストを取り入れた、子育てガイドブックとしてAmazon幼児教育ランキングで1位を記録している。

You Tubeチャンネル「モンテッソーリ教育TV」公開中!
すきま時間でモンテッソーリ教育の本質を効率的に学ぶことができます。コラムの予習・復習にもご活用ください。