オリックス生命

子どもから学ぶ「モンテッソーリ教育」

「モンテッソーリ教育で、子育ての予習」

第10回
最終回

10年後を見据えた子育てを!
変化の本質をつかんで子育てをしよう!

AI(人工知能)技術の進歩によって、今の子どもたちの65%は、将来今は存在しない新しい職業についているかもしれないと言われています。親としては子どもの将来が少し心配になりますよね。しかし、見方を変えれば、自分が本当にやりたい事や人間だからこそできる仕事が見つかる時代になるかもしれません。つまり、新しい仕事を自分 で生み出せるチャンスがやってくるともいえるでしょう。

AI時代を生き抜く能力を伸ばすキーワードは「五感」

人間にあってAIに無いものとは何でしょうか?それは「五感」です。視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚。人間は、この五感をフルに活用しながら、情報を組み合わせて、新しい発想を生み出すことができます。これは、どれだけ技術革新が進んでもAIにはできない事でしょう。
しかし、現代の子どもたちを取り巻く環境は「五感を退化」させるような状況になりつつあります。例えば、スマートフォンの普及により、SNSや旅行サイトを通じて家にいてもまるで海外にいるかのような感覚を味わえてしまいます。
スマートフォンはたしかに便利ですが、子育てでは、ぜひ「子どもの五感すべてを伸ばす」という意識をしてほしいです。
では、それらの能力はどのように伸ばせばよいでしょうか?

「モンテッソーリ教育は感覚教育」ともいわれるほど、感覚を刺激する活動にあふれています。0~6歳の「感覚の敏感期」にあるわが子の五感を大いに刺激するような活動をご家庭でも取り入れてみてください。難しいことではありません。

野に出て、緑を見て、鳥の声を聴いてみましょう。落ち葉に触り、花の香りを嗅ぎ、果実を口にしてみましょう。大切なポイントは、わが子が「今、どの五感を使っているのか?」を意識することです。そして、その感覚を一緒に言葉にして共感しましょう。「風がそよそよと気持ちいいね」「どんな鳥の声が聞こえるかな」「このお花はいい匂いだね」「この実は酸っぱいね」など、言語の敏感期にある子どもは、そのすべてを吸収するのです。

モンテッソーリ教育は特別な施設に通わなくても、身近にあるものからも学ぶことができるのです。

最後に、10年後の世の中を考えた時に、今、私たち親が考えなくてはいけない、とても大切な3つのことをお伝えしておきます。

最後に伝えたい3つのこと
①「テレビ」 「パソコン」「スマートフォン」とのつきあい方

このような話を聞いたことがあるでしょうか?
現代人が一日に触れる情報量は、江戸時代の人の一年分にもあたり、平安時代の人の一生分にあたる。

人間の脳の中身はほとんど変わっていないのに、情報量がこのように桁違いに増えてしまったらどうなるでしょう?現代人の脳には情報が溢れ、まるで「ゴミ屋敷」のようになっているそうです。

その代表が「スマートフォン」です。私たちは、スマートフォンの画面上から流れる膨大な情報を、知らないうちに処理しているのです。処理していくうちに、次々と流れてくる情報の量に対応できず、いつのまにか、情報を受け流すようになり、集中力や新しいことにチャレンジする気力を失っていくのです。
皆さんは、スマートフォンを使っていると、気がつけばあっという間に時間が過ぎていたという経験はありませんか?私たちは、ネット中毒になってしまってもおかしくない環境で過ごしているのです。

中毒性があるものは、世の中にはたくさんあります。例えば、お酒やたばこ、ギャンブルなどが挙げられますが、すべて、年齢や法律で制限が設けられています。では、テレビやスマートフォンはどうでしょうか?
ある程度視聴や閲覧制限ができる機能はもっていますが、大半は制限なく利用されているのではないでしょうか。
テレビやスマートフォンなどの中毒性が将来の子どもたちに、どのような影響を与えるのか?まだ、だれも答えを知りません。
わが子を守れるのは、私たち親しかいません。
使用時間を決めたり、閲覧内容を制限したりするなど、ご家庭ごとのルール作りをするのがよいでしょう。子どもにとって見本となるのは私たち親です。食事の時はスマートフォンをいじらないなど、自らの生活を見直すことが第一歩です。

モンテッソーリ教育では子ども自身が選択して、自分で終わりまで責任を持つことを大切にしています。
幼少期においてテレビやゲームなどの区切りをつける時に、一方的に取り上げるのではなく、キッチンタイマーなどをセットして「これがピピっと鳴ったら終わりにしましょう」と言って、子ども自身にボタンを押させ、自分で決めて、自分で終える「自律」への一歩とすることもできるのです。

②「仮想(ヴァーチャル)体験」と「実体験」について

今よりヴァーチャルリアリティがさらに加速し、将来的には現実と仮想の区別がわかりにくくなる日がくるのかもしれません。
現実の実体験を積み重ねてきた私たち大人は、新しい技術が導入される都度、そのリアリティさに驚きを感じます。
しかし、これからの子どもたちは、ヴァーチャルなことが溢れる世の中に生まれ、育つことになるのです。

私は子育てという観点から見ると注意が必要だと感じています。
例えば「お金」について。私たちの子ども時代には、お小遣いを握りしめ、駄菓子屋に行き、飴玉を買い、おつりをもらうという「実体験」がありました。
しかし、キャッシュレス社会になりつつある現代において、これからの子どもが手にするのは、現金ではなく、初めから「仮想通貨」になるのかもしれません。もしかすると、初めてのお使いがQRコード決済だった・・・という子どもも増えてきているのではないでしょうか?

モンテッソーリ教育における数を理解する取組みでは「現物・数詞・数字」の結びつけを理解するために実物を使って、とても慎重に繰り返し行います。それは、幼少期の子どもの脳が、大人が考える数倍、現実と仮想の区別が付きにくいからです。

ますます便利になる世の流れを止めることはできませんが、そんな世の中だからこそ、0~6歳の幼少期は実体験をしっかり積ませるべきなのではないでしょうか?100年以上前のモンテッソーリ教育が今また注目を浴びている理由はそこにあるのです。

③「正義感」「倫理観」について

昔は、わが子の付き合っている友達や遊ぶ場所を、ある程度親が把握することができました。通信手段も、家の電話一本だけで、付き合う友人も生活圏の中や学校などに限られ、線をたぐれば交際範囲に行きつくことができました。

しかし、現代はLINEやインスタグラムなどを通して、わが子のコミュニティはスマートフォンの中にあります。交際範囲は線から点になり、親は、わが子が誰とどこで、どのように出会い、どのような会話を繰り広げているのか、知る術が無くなるのです。
思春期になれば、誘惑や危険な誘いもたくさんあるでしょう。しかし、そうした危険な誘いを受けた時に、私たち親は99%その現場に居合わすことができないのです。

最終的には、子ども自身の判断を信じるしかありません。
では、子どもに誤った行動を「思いとどまらせる」のは、どんなことなのでしょうか。
「お父さん、お母さんが心配するから帰ろう」「おばあちゃんが泣くから止めよう」と思ったからかもしれません。 「うそをついてはいけません」という幼稚園の先生の言葉かもしれません。
それらのほとんどは、幼少期に身に付いた正義感、倫理感、家庭感が土台になっているのです。

モンテッソーリ教育においても、0~6歳は「文化・礼儀の敏感期」であり、社会に対する考え方が根付く大切な時期です。
そして、その一番の見本は私たち大人なのです。
私たちは、自らの行動を通して、子どもたちにそれを教える責任があるのです。


おわりに

最後までコラムを読んでいただき、ありがとうございました。
2020年春には「3~6歳の実践版」の出版も決まりました。 これからも、モンテッソーリ教育の講演も続けてまいります。
また、YouTubeの「モンテッソーリ教育TV」も、登録者が1000名を超えました。ぜひ、コラムと合わせてご覧ください。

藤崎達宏 プロフィール

日本モンテッソーリ教育研究所認定教師(0~3歳)
国際モンテッソーリ教育協会認定教師 (3~6歳)

外資系金融機関に20年勤務したのちに独立。自らの4人の子育て経験とモンテッソーリ教育を融合した子育て講演会を全国で展開している。 幼稚園、保育園から全国の医師会まで、週末のほとんどが、講演と個別の子育て相談でうまる人気講師。

著書「モンテッソーリ教育で子どもの本当の力を引き出す」は、モンテッソーリ教育の入門書としてベストセラーとなり、台湾での翻訳出版が決定している。

最新作「0~3歳限定の実践版!モンテッソーリ教育で才能をぐんぐん伸ばす」も、豊富な写真とイラストを取り入れた、子育てガイドブックとしてAmazon幼児教育ランキングで1位を記録している。

You Tubeチャンネル「モンテッソーリ教育TV」公開中!
すきま時間でモンテッソーリ教育の本質を効率的に学ぶことができます。コラムの予習・復習にもご活用ください。