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Vol.2「糖尿病」

教えて 矢作先生!

 不適切な生活習慣の積み重ねから起きる生活習慣病。糖尿病や高血圧症など、さまざまな症状がありますが、その多くに共通するのは「肥満」が本質的な原因であること。今回は、肥満と糖尿病の関連、そして治療法や予防法について矢作先生に伺いました。

Q. 糖尿病はどのような病気?

A.糖尿病は、ホルモンの一種・インスリンの働きが低下してブドウ糖を上手く活用できず、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)の高い状態が続く病気です。この状態が続くと血管がダメージを受けてもろくなり、その結果、網膜症や腎症、神経障害などの合併症を発症します。最終的に透析治療が必要になったり失明に至るケースもあります。

また、脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の発症・進展を促進することもわかっています。糖尿病には大きく分けて、右図のように4つのタイプがありますが、インスリンの分泌量が減って働きも低下する2型糖尿病が、全体の95%以上を占めています。戦後、日本の糖尿病人口は増加し続けており、2010年時点で1,000万人を超え、この50年間で約40倍も増加しています。

Q. 肥満と糖尿病との関係は?

A.2型糖尿病は、運動不足や食べ過ぎ、ストレスなど不適切な生活習慣を続けている人に起こりやすい病気、つまり生活習慣病です。生活習慣が乱れている人は太りやすく、実際、2型糖尿病の患者には、不適切な食生活や運動不足による肥満症の人が多く見られます。

肥満から2型糖尿病を発症した場合には、生活習慣を改善して減量することが大切です。ただし、痩せ型の人が必ずしも糖尿病にかからないわけではなく、肥満ではなくても糖尿病を発症する人もいます。体重や体型だけで判断せず、毎年きちんと健診を受けて、血糖値が正常範囲(一般的に空腹時100mg/dl未満)を超えた場合は医師に相談し、生活習慣の改善に努めましょう。

Q. 糖尿病の治療法を教えてください。

A.糖尿病の治療の目的は合併症の進行を遅らせることです。治療は「生活習慣の改善」を基本とし、必要に応じて「薬物療法」も加えます。薬物の種類は一人ひとりの体格や病状に応じて医師が決定・処方しますが、一般的には、飲み薬(インスリンの分泌を促すもの・効きをよくするもの、糖の分解・吸収を遅らせるもの、糖の排泄を促すもの)のほか、インスリン分泌を促す注射や、インスリンを外から補う注射が使われます。ただし、これらの薬を服用しても、生活習慣(特に食生活)を改善しなければ不十分になることが多いです。食生活改善のポイントは摂取カロリーを抑えること。そして一度の食事量が多くなりすぎないように、1日3回規則正しく食べることも重要です。食事の回数が減ると、1回あたりの食事量が増えがちになり、食後に血糖値が急激に上昇してしまいます。血糖値の変動幅が大きいと心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが増すこともわかっています。毎日の食事の時間と量をなるべく一定にして、血糖値を安定させましょう。

矢作 直也(やはぎ なおや)

筑波大学医学医療系 内分泌代謝・糖尿病内科准教授。検体測定室連携協議会代表者。1969年東京都生まれ。東京大学医学部卒。日本学術振興会特別研究会、東京大学大学院特任准教授を経て2011年より現職。医師として糖尿病の診療に当たりつつ、研究者としてニュートリゲノミクス研究を推進。薬局と医療機関との連携による糖尿病早期発見プロジェクト「検体測定室連携協議会(ゆびさきセルフ測定室)」を展開するなど糖尿病学会のホープとして活躍中。

矢作 直也

2019年7月作成